安い家を見つけると、「この金額なら自分にも買える」と気持ちが動く。私も100万円という価格に強くひかれた一人だ。宅建士として確認したつもりでも、購入後には想像していなかった手間があった。安い家を否定するつもりはないが、価格だけでは見えない現実はある。
安い理由は必ずある
売主が早く手放したい、建物が古い、立地が不便、修繕が必要、再販売しにくい。安い理由は物件ごとに違う。大切なのは「安いから得」ではなく、「なぜこの価格なのか」を自分の言葉で説明できることだ。
理由が分からないまま買うと、購入後に初めて代金の続きを払うことになる。
建物があるだけでは住めない
私が買った家には、当初使えるトイレがなかった。数週間は災害用トイレと犬用のペットシーツで生活した。壁が汚い程度なら後回しにできるが、トイレ、水道、排水、電気が使えないと日常生活は始まらない。
内見では設備の有無だけでなく、実際に使えるのかまで確認した方がいい。
宅建士でも分からないこと
宅建士の知識は、権利関係、接道、契約条件を確認するうえで役に立った。しかし、屋根や基礎、木材の傷み、給排水の状態を正確に判断する仕事ではない。
不動産取引の知識と建物を診断する知識は別物だ。古い家ほど、大工や建築士などに見てもらう価値がある。
修繕には時間も必要
大工工事に約50万円かかったが、自分で行ったDIYにも材料費、工具代、作業時間がかかった。作業そのものより、調査、買い出し、片付けに時間を取られることも多い。
休日をDIYに使うことが楽しい人と、負担に感じる人では、同じ物件の価値が変わる。
売るときのことも考える
安く買えた物件が、同じように簡単に売れるとは限らない。道路、傾斜、建物状態、管理費などが理由で買い手が見つかりにくい場合もある。
購入前には、住めなくなったときに維持できるか、売れなくても持ち続けられるかを考えておきたい。
購入前に予備費と時間を用意する
安い家を買うなら、購入代金を使い切らない方がいい。私の場合も購入総額約150万円の後に、大工工事だけで約50万円が必要になった。さらに材料や工具を買う費用もある。最初から正確な修繕総額を出すのは難しいため、予定外の支出を受け止める余裕が必要だった。
お金だけでなく、工事が終わるまでの生活も考えておきたい。トイレが使えない、水が止まる、作業中の部屋を使えない。そうした期間をどこで、どう過ごすかは見積書には出てこない。
私は安い家を買うこと自体には肯定的だ。ただし、安さを理由に急いで決めるより、最低限使える設備、専門家に任せる工事、入居後に残すお金を先に決めておく方がいい。買えるかどうかと、無理なく持てるかどうかは別の問題だからだ。
内見で生活を想像する
内見では、部屋の広さや景色だけでなく、朝起きてから寝るまでの動きを考えたい。水は出るか、トイレは使えるか、風呂をどうするか、洗濯物をどこに干すか。毎日使う場所に問題があると、小さな不便でも積み重なる。
さらに、雨の日や冬の日も想像する。晴れた日の海は魅力的でも、風が強い日や寒い日に同じ家で過ごせるかは別だ。安い家ほど、良いところを探すだけでなく、困る場面を具体的に考える必要がある。
購入を決める前に、直す場所を紙に書き、生活に必須、早めに必要、後回しの三段階に分けるだけでも判断しやすくなる。すべてを一度に直す予算ではなく、最初の一年を乗り切る予算を考える方が現実的だ。
まとめ
安い家は、購入価格を抑えられる代わりに、修繕、管理、時間、将来の売却といった負担を自分で引き受ける家でもある。私は買ったことを後悔していないが、修繕は予想より大変だった。購入前には「いくらで買えるか」だけでなく、「住める状態まで何が必要か」を確認することが大切だ。

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