家は大事なのに、なぜこんなに余っているんだろう。
家は、暮らしの中でもかなり大きな買い物だ。それなのに、場所を選ばなければ安い家が見つかる。誰も住んでいない家もある。
家が必要なくなったわけではないのに、どうして余るのだろう。このまま住む人が減っていったら、日本は更地だらけになるのだろうか。
安い物件を見ていると、買えるかどうかに目が向く。その家が空いたままになっている事情は、値段だけでは見えてこない。
人は引っ越せるけれど、家はついてこない
たとえば、実家を離れて別の町で働き、その町で暮らしができあがっている人がいる。親の家を引き継いだとしても、すぐにそこへ戻れるとは限らない。仕事も、家族の学校も、普段頼っている病院もある。
建物がまだ使えても、その家に生活を移せる人がいるかどうかは別の話になる。
「場所を選ばなければ安い家はある」という感覚には、たしかに可能性がある。仕事や移動の条件が合う人なら、ほかの人が選ばなかった場所で暮らせるかもしれない。ただ、誰もが同じように場所を選べるわけではない。家が余るところと、人が住まいを探すところが重ならないこともある。
人口が減るから家が余る、という説明だけでも足りない。一人暮らしが増えるなど、ひとつの家で暮らす人数も変わる。国立社会保障・人口問題研究所の2024年の推計では、全国の世帯数は2030年を頂点に、その後減っていく見込みだ。人口と世帯数は、同じ動きをするわけではない。世帯数の将来推計
人数だけを見ても、建物の数だけを見ても、どこで家が余るのかまでは分からない。
空いているからといって、売っているとは限らない
空き家が多いなら、安く売れば誰かが住むのでは。そう思うけれど、そもそも市場に出ていない家もある。
国土交通省の2024年の調査では、使用目的のない空き家を持つ世帯のうち、40.6%が今後も空き家として所有する意向だった。物置として使う場合も含む数字で、全国の空き家すべてについて尋ねた結果ではない。それでも、「住んでいない家がある」と「売りに出る家がある」の間に、違いがあることは分かる。空き家所有者実態調査
なぜ手放さないのかは、それぞれの家について聞かなければ分からない。
家財を片付ける。相続や権利関係を整理する。修理して貸すのか、そのまま売るのか、壊すのかを決める。住まなくなった後にも、やることと費用が残る。国交省の空き家対策の案内も、こうした管理や活用、解体の問題を扱っている。空き家対策の案内
「持ち主が売りたがらないから」と一言で片付けると、何が止まっているのかを見落としてしまう。価格を下げれば進む話なのか。それより先に整理することがあるのか。安い家を調べるなら、そこにも目を向けたい。
伊東では、使わなくなった別荘もある
伊東市が2019年にまとめた調査には、「借り手・買い手がいない」「別荘として取得したが使っていない」といった所有者の回答が載っている。売り貸しに出していても相手が見つからないという回答もある。空き家の可能性が高い建物などの所有者に尋ねた当時の調査で、現在の伊東全体を表すものではない。伊東市の空家等実態調査
ここには、手放さずに持っている家だけでなく、次の使い手を探しても見つからない家がある。値段が下がっても、その場所で暮らせるか、直す負担を引き受けられるかは残る。どこで話が止まるのかは、個々の家を見なければ分からない。
そのうち全部、更地になるのか
家は、住む人がいなくなっただけでは更地にならない。誰かが解体を頼み、費用を払い、その後の土地を管理する必要がある。
次に使う人が見つかれば、家のまま引き継がれることもある。建て替えるために解体する場合もあるだろう。行き先を決められず、建物が残ることもある。家が余るという一つの現象から、その先が一通りに決まるわけではない。
国交省には「都市のスポンジ化」という説明がある。街の中に、空き家や空き地が小さく、あちこちに生じていくことだ。日本全体が更地になるという予測ではない。都市のスポンジ化について
人が暮らしている家の隣に空き家があり、その先に空き地があり、別の場所では家が建て替わる。考えるべきなのは、町が一度に消える姿より、こうした変化の積み重なりかもしれない。
更地になった後も、買い手や使い道があるとは限らない。建物をなくせば、土地の問題まで終わるというものでもなさそうだ。
安い家には、その値段に至るまでの話がある
持ち主が使わなくなった家が、次の人にはちょうどいい住まいになることも考えられる。それでも、空いている家がすぐに誰かの暮らしにつながるわけではない。
伊豆の安い家研究所で知りたいのは、住まなくなった後から、誰かがまた使い始めるまでの経緯だ。建物が古いから、人口が減るから、だけでは分からないことがある。
家が余っているのに、次に住む人へ渡らない。その間に何があるのか。
※この記事は全国と伊東市の公表資料をもとに考えたものです。伊東の個別の空き家について、所有者への取材や売却・解体の経緯確認はしていません。